no photo

オススメ映画!-『追悼のざわめき』

こんにちは、水曜担当の武笠恭太です。

大変ご無沙汰しておりました。忙しさにかまけて、ブログの更新を中断していて、楽しみにしてくださっていた方々には申し訳ありませんでした。皆様に読み応えのある記事をご提供できるように努めてまいります。

さて、今日は自分が気に入っている映画のご紹介です。

『追悼のざわめき』(1988年)という作品をご存知でしょうか?

「好きな映画って何ですか?」とよく聞かれるのですが、その度にいつもこの作品を挙げています。

あらすじは以下の通りです。(ホームページより引用)

大阪市南部、若い女性たちの惨殺事件が続発する。
被害者たちは下腹部を切り裂かれ、その生殖器が持ち去られていた。

犯人は廃墟ビルの屋上で暮らす孤独な青年、誠(佐野和宏)。
彼は「菜穂子」と名づけられたマネキンを愛し「愛の結晶」が誕生することを夢想していた。
次々に若い女性を惨殺し、奪った生殖器を菜穂子に埋め込む。

やがて彼女に不思議な生命が宿りはじめ、様々な人間が、 誠と菜穂子が暮らす「魔境」=廃墟ビルへと引き込まれていく。

現実の街並みは、いつしか時間感覚を失い、傷痍軍人や浮浪者など、 敗戦直後を思わせるグロテスクなキャラクターが彷徨しはじめる。
純粋に二人だけの世界で生きていた幼く美しい一組の兄と妹(隈井士門、村田友紀子)。 遊びといえばケンパしかしらない。かれらもまた、菜穂子がいる廃墟へと導かれてゆく。

菜穂子と産まれてくる子供のために、誠は、小人症の兄妹(日野利彦、仲井まみ子) ふたりきりで営まれる下水道清掃会社で働きはじめる。
福田の妹・夏子は誠に心ひかれてデートに誘うが、路上で暴漢に襲われ、無残にもレイプされてしまう。< 深い絶望は、自分の醜い火傷姿が男たちに愛されたことで癒されるが、 誠に、愛する「女」がいることを告白され、孤独と嫉妬に打ちひしがれる。
街をさまよい、やがで廃墟ビルへ…。

廃墟ビルの屋上。
幼い妹は菜穂子に「母」の面影を見る。
兄は、その姿に激しく「性」を感じる。

そのとき、廃墟ビルに引き込まれた人々に残酷な運命が訪れる……。

近親相姦、輪姦、人種差別、カニバリズムなど目を伏せたくなるほど凄惨な描写が多く内包している作品ですが、こういった狂気的なものを表現の第一目的とするような嗜狂的な作品では決してありません。

様々な人物たちの境遇がひとつの廃墟ビルを中心に織り成す物語ですが、そのなかで僕が一番心を打たれたエピソードがあります。

それは幼い兄妹愛のエピソードです。

あらすじにもありますように、中学生くらいの兄が、ふとした瞬間、幼い実の妹に激しく性を感じ、彼女を犯して、結果として出血多量で妹を殺してしまいます。そして、死んでしまった妹を土の中に埋めました。しかし、兄は考えました。

土の中で独りでいるのはあまりにも寂しくないか?どこに眠らせてあげれば妹は安眠できるのだろうか?

そう思った兄は、土の中から妹の死体を掘り返し、泥だらけになった死肉を口に運んで、自分の体内に埋葬しました。

行動としてはひどく惨たらしいものですが、このシーンを見たとき、そのような否定的な感情は自分には芽生えませんでした。むしろ抱いたのは、純粋な愛の感情です。

この作品は、一見して汚れを描いているように見えて、ふとした瞬間、人間の清純な感情が垣間見える、そんな作品です。

何年か置きに、日本各地の映画館で上映がされることがありますので、ご覧になれる機会がありましたら、必見と言えるくらいオススメの映画です。

それではまた来週宜しくお願いいたします。

 

武笠恭太