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日本史のストーリーテリング(1)-絵で物語を聞く      

Tokyo New Cinemaでは、映画制作で培ってきた「物語を伝える力」を、企業や地域、教育機関の発信にも活かしています。商品やサービス、地域の取り組みの背景には、必ず人の思いや課題があります。なぜその取り組みが生まれたのか。どんな人が関わり、何を目指しているのか。そうした背景まで伝えることで、情報はただの説明ではなく、見る人の心に残る物語になります。TNCでは、この力をストーリーテリングと捉えています。

中世日本にあった「絵解き」という文化

実は、絵と言葉を使って人の心を動かす方法は、現代だけのものではありません。中世日本にも、絵を見せながら人々に物語を語り聞かせる文化がありました。それが「絵解き」です。

絵解きとは、寺社の縁起絵や仏教説話画、絵巻などを前にして、その内容を人々に語り聞かせることです。語り手は、絵に描かれた人物や出来事、そこに込められた意味を説明しながら、聞き手を物語の世界へ導いていきました。現代でいうところの紙芝居に近いものです。

大切なのは、絵解きが単なる「絵の説明」ではなかったということです。描かれている内容を順番に説明するだけなら、それは解説にすぎません。しかし絵解きは、絵に描かれた内容や思想を、語り手の言葉によって物語として立ち上げる営みでした。文字を読めない人や仏教に詳しくない人にも伝わるように、絵と言葉を組み合わせながら、聞き手を物語の世界へ導いていたのです。

絵と言葉が、人の感情を動かす

たとえば、恐ろしい地獄の場面は、死後の苦しみや罪への不安を思い起こさせます。一方で、美しい浄土の場面は、救いへの憧れや信仰への思いを抱かせます。仏や地獄、浄土といった世界は、それだけでは現実から離れた遠い出来事に見えるかもしれません。しかし語り手が、その物語を人々の暮らしや不安、願いと結びつけることで、絵は「自分に関係のある物語」へと変わっていきました。

その意味で絵解きは、物語をわかりやすく伝えるだけでなく、宗教的な教えを人々の心に根づかせる役割も果たしていました。難しい仏教の思想や死後の世界を、絵と語りによって具体的に示すことで、人々は信仰の世界をより身近なものとして受け取ることができたのです。

つまり絵解きとは、絵に描かれた情報に意味を与え、人の心に届く形へ変える技術でした。そしてそれは、理解を助けるだけでなく、人々の感情に働きかけ、信仰や行動へと導く力を持っていたのです。

絵解きから現代のストーリーテリングへ

この考え方は、現代のストーリーテリングにも通じています。企業が理念を伝えるとき、地域が魅力を発信するとき、映画が観客に世界観を届けるとき、ただ情報を並べるだけでは十分ではありません。なぜそれを伝えるのか。誰のどんな思いがあるのか。それによって、人や社会がどう変わるのか。そこまで語られて初めて、受け手はその情報を自分に関係のあるものとして受け取ることができます。

情報があふれる現代では、どれだけ価値のある取り組みでも、ただ説明するだけでは届きにくくなっています。だからこそ、その背景にある思いや課題、関わる人々の姿までを、物語として伝えることが重要になります。

企業や地域、教育機関の中にある思いや背景をすくい上げ、見る人の心に残る形へと変えていくこと。それが、Tokyo New Cinemaの考えるストーリーテリングです。 

また、現在Tokyo New Cinemaでは、若手幹部候補・インターンを募集しています。映画や映像制作、ストーリーテリングを通じた発信に関心のある方は、ぜひご覧ください。

                               TNC Journal 260702 M. K                                                    

画像出典:Wikimedia Commons「『籠耳』より、絵解きを行う熊野比丘尼」/Public Domain