『四月の永い夢』公開に向けて(監督・中川龍太郎)

5月12日の『四月の永い夢』全国公開を控えて、監督の中川龍太郎からのメッセージをお届けします。

 


『四月の永い夢』公開に向けて

 

2年前の2月、僕はネパールを旅していました。

首都のカトマンズから飛行機で数時間。

ニムディという小さな村で、初めて地平線というものを見ました。海と山に囲まれた日本では見たことがなかったのです。地平線、というものを。ライ麦畑に囲まれて、地平線に沈む太陽を見たときに、どうやってこの感動を人に伝えたらいいのか、ふと頭をよぎりました。僕にとって、それを映像で撮ることは何かが違いました。

僕はそのとき手紙を書きたいと思いました。
その手紙を届けたいと思うひとがいました。
でも僕にはその手紙を届ける術がありませんでした。
でも僕はその手紙を書いて良かった。ネパールの伝統的な紙で書いたその手紙、書いておいて良かった。

東京に帰って、僕は脚本を書きました。
『四月の永い夢』は、届かない手紙、でも書かないと前に進めなかったと思った手紙についての映画です。

それから2年経って、その映画が公開になります。
未熟なところも多々あるでしょう。
賛否があって、否の意見を見たらやっぱり多少は落ち込むでしょう。
でもそれが今生きていられるということの歓びなんだと感じます。
少なくとも当時の僕も、関わってくれたスタッフもキャストも、公開に向けて宣伝を尽力してくれた新しい仲間たちも、最善は尽くした、その事実が生きているということなのではないかと思います。

この映画に関わってくださった全員の方に感謝しつつ、さて明日から公開だ。

言い訳はしないぞ、言い訳はこの文章で十分だ。

 

平成30年5月11日

中川龍太郎