『四月の永い夢』本編冒頭映像を公開します(中川龍太郎監督コメントあり)

5月12日(土)から新宿武蔵野館ほか全国で順次公開される映画『四月の永い夢』、公開に先駆けて本編の冒頭映像を特別解禁いたします。

公開した冒頭映像は、主人公のモノローグが印象的な映像となっています。満開の桜と菜の花を背に、喪服姿の主人公・初海(朝倉あき)が佇む映像とともに、彼女のモノローグが始まります。今回、中川龍太郎監督がその声に魅了されキャスティングを熱望した朝倉あきさんの表情が、憂いを帯びた声が主人公の喪失感を物語っています。

中川龍太郎監督のコメント:

春の霞が立ち込める中、桜と菜の花に囲まれた世界にぽつりひとり、喪服を着た女性が立ってこちらを見ている。そのイメージが浮かび上がったときに今回の映画を撮ることが自分の中で決まりました。

撮影したのは2年前の春真っ盛り。撮影した午前中だけ見事に光が差しました。あの日に吹いた風を、是非劇場の暗闇の中で多くの方と共有できたらこんなに幸せなことはありません。

本編冒頭動画はこちらからご覧ください。




≪冒頭モノローグ より≫

世界が真っ白になる夢をみた

小学生のころ 授業を聞かずに窓の外の山々をずっと見ていた
中学生のころ 授業を聞かずに地図帳を指で辿って日本の隅々を旅していた
高校生のころ 恋愛に奥手だったわたしは
宛先のないラブレターを書いては机にしまっていた

大学生になってわたしは東京に出てきた
四月の陽射しにほだされて わたしはようやく恋をえた

とても不思議な人だった
決して目を合わせようとしない人だった
けれども とても優しい人だった

それからどれくらい経っただろう
いつの間にか わたしは窓の外の山々を夢見ることなく
いつの間にか わたしは遠くの知らない町を夢見ることなく
詩の書き方さえ机の中にしまってしまった

ふと目を覚ますとわたしの世界は真っ白なまま
覚めない夢をただようような 曖昧な春の陽射しに閉ざされて
わたしはずっと その四月の中にいた