骨髄提供したことについて

こんにちは、代表の木ノ内です!

ここ数ヶ月の間はカンヌへ行ったり、クラウドファンディングをしたり、愛の小さな歴史』全国上映を始めたりと忙しかったですが、今日は音楽を聴きながらゆっくり骨を休めています。

本日の投稿は映画にあまり関係ない個人的な体験、私が面識のない他人に骨髄を提供をしたことについて書きます。ちなみに骨髄提供とは白血病などで健康な血液を作れなくなった患者に血液の元(骨髄)を提供する行為です。

2014年の秋、一通の書類が自宅に届きました。

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送り主は「公益財団法人 日本骨髄バンク」。封筒には「重要書類在中」、「ただちに内容をご確認ください」と書かれていてピンときました。

「ドナーに選ばれた」

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この書類が送られる2ヶ月まえ(2014年夏)、私は骨髄バンクに登録しており、想像していたより早く骨髄提供の候補者に選ばれたようでした(人によっては登録から2週間〜10年ほど適合通知にばらつきがあります)。

以前「骨髄バンクに登録したきっかけってなに?」と友人に聞かれたことがあります。その時は理由が思いつきませんでしたが、思い返すと大学時代に祖父が白血病で亡くなった事、大学卒業後は医学研究の仕事に携わり、映画を初めてから医学に貢献しておらず少なからず後ろめたさを感じていたからかもしれません。そして2014年夏は私が日本に帰国し1年の節目でした。

私は同意の返事を翌日に送り、3ヶ月後に骨髄提供を行いました。提供まで時間がかかり「自分は明日にでも患者に骨髄を提供できるのに」ともどかしく思っていましたが、よく考えてみると人の臓器をまったく知らない他人に提供するというのはとても大変な事でした。

骨髄提供には複数の検査(ドナー審査)、ドナー本人及び家族への面接、病院への調整が必要です。それを年末年始を含めた3ヶ月という短いスパンで骨髄バンクと病院は連帯を行い、とても感謝しております。また骨髄バンクと医師からは提供までに何度も丁寧な説明があり安心してドナー提供ができました。

ちなみにこのようなドナー適合通知は一度に複数のドナーに送られます。ドナー登録した全ての方がドナーになるわけではなく(*ドナー登録しても、ドナーになる義務はありません)、患者の体質と会うドナーが当然ながら優先されます。私はたまたまそれらの条件に合い、最終的に提供することができました。

最初の書類を送ってからすぐに検査と面談の予定が組まれます。ちなみに私は町田市在のせいか検査は片道一時間半の病院まで行きましたが、通常はより最寄りの病院になるようです。ドナー提供をする事による謝礼は一切ありませんが交通費は出ます。

検査結果は良好、患者とも結果が合うようで最終面談となりました。とりあえず北海道の両親にドナーになる了解をとり、骨髄提供(採取)に同意致しました。提供先の患者は関東在住の30代男性、私と年齢も近い患者さんのようです。

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ちなみに提供先の患者さんとは一切会えず、手紙も個人情報を含めない2通までと制限がかけられます。これは患者とドナーの間で金銭的やりとりを生じさせないためであり、両者の公平さを保つポリシーです。

そして骨髄採取をするのは都内の病院に決定しました。私の担当医はご自身も20代の頃に骨髄提供をされた立派な方で、安心して採取を任せることができました。

採取するまえにもう一度入院先の病院で入念な検査があり、入院や手術についての詳細な説明を受けました。

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病院からの景色

骨髄採取の入院は、わたしが27歳の誕生日を迎えた次の日から始まりました。入院した最初の夜から絶食して、明朝の手術に備えます。ちなみに手術の時は下着や金属をつけてはいけない決まりがあり、パンツ無しで手術室まで運ばれた時が一番緊張しました。

骨髄採取を簡単に説明すると、腰の骨(腸骨)から骨の髄を注射で抜き取る事です。世間的には痛いイメージがありますが、手術は全身麻酔によって行われるので寝てる間に終わります。昔はかなり肉体的苦痛があったようですが、いまの時代は手術もかなり洗練されており、全身麻酔と痛み止めの効果でちょっと重い筋肉痛程度の痛みでした。

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骨髄採取後、覚醒後に自画撮り

麻酔から覚めた病室での写真です。酸素マスクが着用され、手首には点滴が繋がれています。麻酔から覚めたときはかなり寝ぼけており、麻酔医の先生に「悪夢を見た」と文句を言っていました。このあと一眠りしてマスクは外してもらえました。

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足には加圧器を装着

また、足には加圧器が装着され足の血液が固まらないようにされていました(エコノミー症候群対策)。これも術後にすぐ外してくれます。

腰は初日と翌日に痛み止めをもらいましたが、そのあとは患部(腰)を押さないかぎり痛みはありませんでした。点滴は痛み止めが終わるまで付けっぱなしで、2日間で外せました。

入院しているときはひたすら読書をしていましたが、親戚や友人が一人もお見舞いに来なかったらのは正直ショックでした(後日談:「入院中の姿を見を見てほしくないと思い遠慮していた」とのこと)。しかしその病院に入院している患者のなかで私の体がきっと一番健康で、看護師さんもとても優しかったので良しとします。また入院中は骨髄バンクの方や担当医の先生が様子を見に来てくれました(担当医によると私の骨髄液は溢れるほどあったので楽だったそうです)。

そして3日目に無事退院。本当に不安なことがひとつもなく退院できました。

退院後は骨髄バンクから電話でのフォローアップ、1ヶ月で患部の痛みが完全に消え、3ヶ月後にアンケートのお願いと厚生労働大臣から感謝状をいただきました。

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私は病院で寝て本を読む事しかしておらず、私が骨髄提供に貢献できたことは全体のほんの一部でした。今回の骨髄提供は骨髄バンク、日本赤十字社、医師、看護師、そしてそれら環境を取り巻く関係者の方々がいてくれたからこそできたことで、また実際に私の骨髄によって患者が救われたかはわかりません。患者の病態はドナーには報告されない規定があります。

白血病患者は若いほど病状の進行が早く、放射線治療は苦痛で、子供ができなくなるなどの症状がありとても胸が苦しくなります。余談ですが、骨髄を受けた患者はドナーと同じ血液型になります。これは骨髄移植を受ける時に患者の骨髄をすべて放射線で破壊して、ドナーの骨髄から新しい血液を作るためです。よって、患者の血液は移植後にドナーと同じ血液型とDNAになります。

現在、私が出来るのは患者さんに向けて手紙を送ることしかありません。しかし、もし手紙の返事が来なくてもわたしはまた骨髄提供を行いたいと思います。私がドナーにならなくても他のドナーが必要な患者に提供できるかもしれませんし、ドナーになることによって時間的な制約も増えます。しかし、もし私が行動することにより1人でも苦痛から解放されるのであればそれは私にとっても幸福なことだと感じます。

以上が私の骨髄提供をした経験と感想です。

Tokyo New Cinema
代表取締役 木ノ内輝
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骨髄提供にご関心がある方は、骨髄バンクのウェブサイトをご参照ください。最寄りの献血センターで簡単にドナー登録ができます:http://www.jmdp.or.jp/