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【ご報告】

さる6月24日、これまで多くの作品で協力してきてくれた小笠原航が亡くなりました。

彼はTokyo New Cinema設立以前から助監督や役者として自分の作品づくりに協力してくれていました。とてもじゃないけど公開できるレベルの作品ではなく、仲間内の酒のツマミのようになってしまった作品ではありますが、それでもそれらの作品がなければ今日は絶対にありませんでした。

TNCを設立してからは、彼は映画とは異なる道に進みましたので、直接的に作品に関わる機会は減りましたが、顔合わせや打ち上げの飲み会には毎回来てくれて、手伝いが必要な時やエキストラが必要な時はいつも来てくれました。『Last Good Bye』『きっと、世界は美しい。』『Calling』では端役で出演しています。『rin』では撮影がクリスマスの日だったのですが、スクリプトとして参加してくれました(彼はサボって隅で煙草を吸ったり、居眠りしたりしていましたけど)。来るべき新作『Plastic Love Story』にも1シーン出演してくれています。『きっと、世界は美しい。』以来の台詞のある役でした。

彼は大学に入って最初にして最大の友人でした。大学1年2年の時、毎日のように講義をサボって一緒に映画館に通っていました。大学のキャンパスや溜まり場となっていた自分のアパートは勿論、新宿や渋谷の居酒屋やバー、喫茶店、本屋、映画館、その殆ど全てに彼との思い出があります。

僕はこれまで二度、映画をやめようと考えたことがありました。そのいずれも、彼の言葉によって、結局映画を撮り続けることを決意しました。彼が自分に教えてくれたことは「良い映画を撮ること以上に、映画を撮り続けることに意味がある」ということでした。しんどいと泣きついた時に「走れ、絶望に追いつかれない速さで」とメールを送ってきてくれたこともありました。印象深い言葉として、今の自分を支えてくれています。

彼がいなかったら自分は既に映画をやめていたと思います。だから、これから自分が作っていく映画は、どんな映画であれ、彼なしではありえなかった作品ということだと思います。

哀しみが尽きることはありませんし、本当の意味で立ち直ることは一生できないかもしれませんが、彼と過ごした青春を否定しないためにも、全力でこれからも映画を撮っていきます。既に昨日から団体の活動は再開しています。明日からはブログも通常の内容に戻ります。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

最後に、小笠原航が殊更に愛した映画の題名をいくつか挙げて、筆を置かせていただきます。

『気狂いピエロ』『ソシアリスム』『引き裂かれた女』『果てなき路』『ファム・ファタール』『キングス&クイーン』『クリスマス・ストーリー』『マルホランド・ドライブ』『チェンジリング』『ミュンヘン』『恋人たちの失われた革命』『無言歌』『息もできない』『男はつらいよ』『ソナチネ』『グラン・トリノ』

平成25年7月2日

中川龍太郎