PLS特集【俳優編】
こんにちは。
廣瀬です。
ロードショーが終わったと思い、映画を見てくださった人がより楽しめるようにとPlastic Love Story特集を組んでいたのですが、なんだかまたロードショーできるようになったみたいで、てんやわんやです。
です、が、変わらずに書いていきたいと思います。
今日は俳優編。
今でこそ僕はTokyo New Cinemでスタッフとして仕事をしていますが、最初からそうだったわけではありません。一番初めは、外部の俳優として一緒に映画を撮ったんです。
『Plastic Love Story』に出演しました。このホームページの新作情報のストーリーを見ると、この文面があります。
「医院を構える父のもとで療養中の心を病んだ美しい青年・潔が、自分と似た孤独感をもつ奏恵に対して、不気味な笑みを差し向ける。若くして彼との子を身籠ってしまうが、その命は日を見ることはなかった。」(ストーリーより抜粋)
僕は潔でした。「美しい青年」というのは僕が書いたのではないので気にしないでください。(ちなみにTNCのプロデューサーになってからチラシやプレスリリースを書いたりするのですが、その時にあまりにも恥ずかしいので「美しい」という形容詞をみんなに内緒でこっそり抜いたりしています。ごめん。)
この動画の30秒くらいのとこで「僕たちの子供、最高じゃないか!」って言ってるやつです。
話がそれました。ともかく、僕は潔でした。なぜそこからプロデューサーになったかという話はおいておいて、今は俳優として書くことに徹します。
出会いは奇なるものでした。
僕からTokyo New Cinemaに連絡したんです。
というのも何となくTokyo New Cinemaのホームページを開き、そしてふらっと『雨粒の小さな歴史』と『Calling』の予告編を見て、驚きました。激しかった。そして美しかった。決してうまいわけじゃないんだけど、激しかった。ものすごい信念と、徹底した美意識で、映画全体が引き絞られていました。どれだけの覚悟と努力を重ねればこんな作品がつくれるのか、とあっけにとられました。しかもそれをたった22歳の青年がやってのけていた。
それですぐに「オーディションしてくれ!」ってメールをうちました。
こんな作品をつくる監督のもとで演技したかったってのもありましたが、正直に言うと8割くらい打算でした。「こいつは絶対将来でっかくなるから今のうちに仲良くなっておこう」とか。もちろんそんな打算は中川監督に会ってぶっとぶことになるんですけども。それについては別のところで書きますね。
で、メールして。でも返事がなくて。あとで分かったことで、監督はすぐに返事を書いてくれていたんですが、僕の方がPCメールを受け取れない設定にしていて受信できなかったんです。
それで返事もらえないなぁとしょげていると、ある日監督が我が家に来たんです。友達が偶然連れてきてくれたんですね。
「はじめまして。中川龍太郎です。」
「?????????監督?」
「はい。」
「メールしました、廣瀬です!」
「!」
それで、オーディションしてもらって、『Plastic Love Story』に出演することになりました。
台本をもらいました。衣装合わせをしました。そしていよいよ富山に出発です。
監督の演出は徹底していました。
他の人と話さないでくれ、特に相手役の女優さんとは。
ということで、夜行バスとか電車、ご飯、ロケ地移動は一人でした。半月くらい撮影していたので、けっこう寂しかったです。出演者の梅津さんと同じロッジに宿泊していたのですが、話せないので気まずかった。梅津さんはすごくいい方でコーヒーとかいれてくれるんですよ。でも話すわけにもいかないから、頭を、ぺこっ、とちょっとだけ下げるくらいしかできない。気まずい。
スタッフさんとも、20分くらいあるロケ地までの道を二人であるいていても、一言も会話がないわけです。「準備お願いします。」「はい。」くらいで。
よくぞそこまで徹底して役作りに付き合ってくださったな、とほんとうに感謝しています。
さすがの徹底ぶりでした。役者冥利に尽きるってもんです。
怖かったのはひとりで海辺の船小屋に泊まったことです。演技に役立つかな、と思って監督に泊まらせてくれるようにお願いしました。
船小屋って言うのは船道具をしまっておくための小屋で、薄いトタンと木で囲われてるだけのつくりです。真冬の日本海の目の前にぽつんと建っています。明かりも暖房もありませんでした。周りには人家はなく、街灯も見当たりません。日本海が目の前にあるから、「ざざぁ、ざざぁ」と一晩中波の音が聞こえてきます。それに風と大雨でたまにトタンが叩きつけられて、壁を殴りつけたような「バンッ!バンッ!」という騒音がします。帰ろうと思っても大雨だし、入り口を開けても暗闇で一歩先もわからない。来たことを後悔しました。制作のフネさんが行きは送ってきてくれたんですが、帰り際に明日のご飯ですと言って食パン1袋を置いていきました。「パンに挟むといいですよ」と板チョコを1枚。あとなぜか「糖分取ってください」と言ってスティックシュガーを3本置いていきました。使い道はわからず、結局次の日の朝持ち帰りました。フネさんは間違いなくとびきり優秀な制作さんなのですが、謎が多いです。
じゃあ怖い思いをしていいことがあったかと言うと、僕の感じる限りではさして演技には役に立ってないような気がします。ただ、その後たいていのことでは恐怖心を抱かなくなったのがよかったです。
撮影が終わり、無事にみんなと話せるようになりました。
富山名物のたら汁とホタルイカもぞんぶんに食べました。
主演の山脇さんと海辺です。
山脇さんは踊ります。
朝日町で撮影させてもらったのですが、朝日町はたら汁と、ホタルイカと人情にあふれたよい町でした。
そう言えばちょうど7日の夜にまた朝日町へ出発できます。
9日に朝日町で『雨粒の小さな歴史』の上映会を行うのです。映画館がないので、お寺でやります。
(詳しくはこっち)
これからはTNCのプロデューサーとしての働きがメインになりますが、このとき僕のような名もない俳優を、俳優として誠実に扱ってくれたことは本当に感謝しています。すごく生きがいを感じた時間を過ごさせてもらいました。今度は僕自身がスタッフの立場として、いい映画をつくるため、俳優さんに生きがいを感じてもらえるような環境作りができるよう努力します。
3月20日から4月11日まで、追々加ロードショーが決まりましたので、よかったら遊びに来てやってください。
それでは失礼します。