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キャメラマン 宮川一夫

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こんばんは。今日は金曜日なので、TNC撮影担当の今野の日です。

本日僕が書かせていただくのは、生涯で計43人の監督と組み、計134本の作品の撮影を手がけた日本を代表するキャメラマン、宮川一夫さんです。その中には、日本映画の3大巨匠といわれる小津安二郎監督、黒澤明監督、溝口健二監督も含まれます。とにかく凄い方なのです。

しかし僕は宮川さんについてよく知っていたり、作品に詳しい訳ではありませんが、最近になってどうしてもこの方の存在が気になり、一冊の本を購入しました。

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『私の映画人生60年 キャメラマン一代』(著者:宮川一夫)

今までお会いする機会のあった先輩キャメラマンの多くが、宮川さんに対して敬意を払われていたように感じます。この本は新宿紀伊国屋書店にて探しましたが、在庫なしとのことにより、アマゾンで注文致しました。

さて、僕がこの本を読み始めてまず驚いたことは、著者の宮川さんがとても若々しく、22歳の自分でも共感してしまうことがたくさんあるほど若い!ということです。この本の出版当時1985年には77歳という年齢からしても僕にとっては衝撃でした。それにしても表紙のキャメラを覗く横顔が眩しい!

勿論自伝なので、内容は宮川さんが若いころの出来事も多いですが、それを語る文章といいますか、言葉の一つ一つに若さを感じます。例えば宮川さんがキャメラマンとして一本立ちした頃の作品では、時代劇の撮影でローラースケートを履いて、手持ちカメラを持った彼の腰につけたバンドを、監督さんや助手に押したり引いたりしてもらいながら撮影をしたのだとか。(以下抜粋)“カメラを手に持ったまま、ローラースケートで滑るのですから、画面は流れるし、手ブレするのは仕方がありません。会社の首脳部も「どうも目がチラついて疲れる」と機嫌はよくありませんでしたが、結構迫力もあり、私は気に入っていました。(中略)今では手持ちで撮ることなど珍しいことではありませんが、多少早過ぎたのかも知れません。もともと撮影部の中では「宮川はときどき妙なことをする」といわれてはいたのです”

宮川一夫さんと言えば、カメラはどっしり引いた構図だったり、あまりカメラをグワングワンに振らない人という勝手なイメージがありましたので、これは意外でした。僕は比較的カメラをグワングワンに動かして撮るのが好きなので、この部分を読んだ時には興奮しました(笑)

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『雨月物語』(溝口健二監督作品)より、引き画の1ショット

宮川さんが世界的に有名になったきっかけの作品として『羅生門』(黒澤明監督作品)があります。その作品ではコントラストの弱い画調を得意とした宮川さんが、作品に合わせてあえてコントラストを強くし、陰影をつけることによってキャメラによるギラッとした映像を演出をしました。特にそれは作品冒頭部分の原生林の中のシーンで際立ちます。宮川さん自信はこの映像に満足だったらしいのですが、肝心の黒澤監督がすぐに何も言ってくれず内心不安になったそうです。

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rasyomon2『羅生門』より、原生林の中、コントラストの強い映像。

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京マチ子(左)三船敏郎(右)

このことについて黒澤明監督は自伝『蝦蟇の油』のなかでこう語ったそうです。―後に、ヴェニスで、キャメラが初めて森の中へ入った、と云われたこのシーンは、宮川君の傑作であると同時に、世界のモノクロ映画の撮影の一つの傑作と称しても好いと思う。それなのに私は、何故だか、その出来ばえをほめることを忘れていた。素晴らしい、と思った時に、素晴らしいと宮川君に云った積りになってしまったらしく、或る日、宮川君と旧知の志村さん(喬、俳優)に、宮川君がキャメラはこれでいいのかどうか心配していますよ、と云われるまで、そのことに気づかなかった。私は志村さんにそう言われて、はじめてそれに気がついて、あわてて云った。

「百点だよ。キャメラは百点!百点以上だ!」―

宮川さんはこれを、『蝦蟇の油』を読んで知ったというのですから驚きます。志村喬さんは黒澤監督作品の常連の役者さんです。

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『羅生門』より、宮川さんとは旧知の仲の志村喬さん(中央)

この作品は1951年第12回ヴェネチア国際映画祭にて金賞を受賞しており、世界的な映画祭で日本の作品が受賞したのはこれが初めてだそうです。そんな宮川さんの映像を観たい方はこの『羅生門』本編を観て頂ければ一番良いのですが、ここには載らないので・・・かわりにちょっとマイナーな、面白い映像を見つけたのでここにあげておきます。




見ての通りウィスキーの宣伝ですが、実は撮影者の宮川さんは殆どお酒が飲めない方だったらしいです。

この本を通して宮川一夫さんを知り、更には映画づくりに携わることにおいて、真剣さの中にも遊び心を持つことが、思ってもみない発見を導き、映画をより豊かなものにするのだと教えてくれます。僕のような未熟でまだ駆け出しの人間が彼のような偉人について書くなど、恐れ多いことですが、それでもいまの自分の中にある感動を残しておきたいと思い、本日は書かせて頂きました。

もっと僕らも沢山遊んで挑戦して行きたいと思います!

TNC今野

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